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東京地方裁判所 昭和52年(特わ)3301号 判決

主文

被告人を罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は、被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都渋谷区渋谷一丁目一四番一四号に本店を置き、同所においてキヤバレー「ヤングレデイ」を経営し、同店にかかる地方税法第一一九条第一項、東京都都税条例第五四条第一項所定の料理飲食等消費税の特別徴収義務者であつた旭日産業株式会社(昭和四〇年一一月一三日設立、資本金五〇〇万円)の代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、同社の業務に関し、昭和五〇年二月から同年一一月までの間、別紙一覧表記載のとおり、同社がキヤバレー「ヤングレデイ」の利用者から各月において徴収して納入すべき料理飲食等消費税合計二六〇九万三一二九円をそれぞれの納期限までに東京都に納入しなかつたものである。

(証拠の標目)(省略)

(弁護人柴山圭二、同近藤彰子の主張について)

所論は、被告人は地方税法第一二二条第四項所定の本件犯行の「行為者」に該当しないというのであるが、企業組織体の業務活動は多数の者の協同によつて成り立つのであるから、現実に計算、記帳、納入申告書の作成等に携わる者が他に存したとしても、これらの業務を指揮し統括する立場にある者をその「行為者」と認めて妨げないものと解すべきである。前掲各証拠によれは、キヤバレー「ヤングレデイ」の料理飲食等消費税の納入事務は、旭日産業株式会社経理部長市万田晴弘の主として担当する事務であり、同人が総務部長(昭和四八年以降は常務取締役)長坂善三郎らと相談し、補助職員等を使つて遂行していたことが窺われるが、検察官主張の如く、同社は被告人のワンマン会社であつて被告人は営業活動のすべてを掌握し、前記市万田らを指揮して納入事務を行なわせていたものであり、右事情は被告人が他に多数の会社を経営し、旭日産業に常時出社しないようになつてからも変りはなかつた(もつとも、傍系会社の経営に失敗し、昭和五一年九月三〇日以降旭日産業に寄り付かなくなつてからは実権を喪失し、キヤバレー「ヤングレデイ」の営業は同五二年二月一七日に前記市万田らが設立した青山興業株式会社に移された事情は窺われるが、それは本件犯行後における事情変更にほかならない。)ものと認められるから、本件料飲税不納付の「行為者」は被告人であると認めるのが相当である。論旨は理由がない。

(法令の適用)

一  判示各所為(各月ごとに一罪)

各地方税法第一二二条第一項、第四項(各所定刑中いずれも罰金刑を選択)

一  併合罪加重

刑法第四五条前段、第四八条第二項

一  労役場留置

刑法第一八条

一  訴訟費用

刑事訴訟法第一八一条第一項本文

別紙 一覧表

〈省略〉

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